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生ごみを活用したメタン発酵の残渣と馬ふん堆肥の混和で野菜への肥効改善
-エネルギー生産、資源リサイクルおよび地域環境改善につながる基本技術-

 真人娱乐農学部附属国際フィールド農学センターの小松﨑将一教授らの研究グループは、日立セメント株式会社および株式会社リーフと共同して、生ごみを活用したメタン発酵の残渣と地域で排出される馬ふん堆肥などを混和することで、メタン発酵の残渣の肥料効果を5.9倍改善することを明らかにしました。メタン発酵による再生可能エネルギーの産出と化学肥料の使用量削減ならびに地域の環境改善に向けた地域循環システム構築に向けては、発酵残渣の高度利用という課題がボトルネックの一つとなっていましたが、本研究成果はその課題解決につながることが期待されます。

この成果は、2021年12月3日、スイスの農業生産科学専門誌『Horticulturae』(2021年12月号)に掲載されました。

>>詳しくはプレスリリース(PDF)をご覧ください

背景

食品廃棄物のメタン発酵による再生可能エネルギー産出と化学肥料削減のサイクル

 近年、食品廃棄物のリサイクル方法の一つとして、メタン発酵によりバイオガスを生成(メタン化)し、電気?熱にエネルギー利用する取組が進められています。この取組は、地球温暖化対策や廃棄物処理など、食品関連事業者にとっての喫緊の課題への対策として有効であるほか、再生可能エネルギーの産出に寄与できます。
 また、農林水産省は、2021年5月に発表した「みどりの食料システム戦略」において、化学肥料の30%削減を打ち出しています。その実現のためには、地域の未利用有機資源を有効に活用し、地域内での栄養塩の循環を作り上げることが急務です。

メタン発酵残渣由来の堆肥+競走馬飼養で発生する馬ふん堆肥→地域に根差したリサイクル社会

 こうした動きの中、茨城県土浦市では、2015年4月より生ごみ分別収集を開始し、土浦市内にある日立セメント株式会社の神立資源リサイクルセンターにおいて、集めた生ごみのメタン発酵処理によるエネルギー生産と、発酵残渣由来の堆肥のリサイクル事業を行っています。この堆肥は窒素などの栄養塩が豊富である一方で、栄養成分のバランスにやや偏りがあり、また、未熟有機物がもつ特有の作物への生育阻害物質なども含有していることから、商業的な農家での利活用はまだ限定的です。

 一方、競走馬の飼養が盛んにおこなわれている茨城県稲敷郡美浦村では、毎日多くの馬ふんが排出されますが、肥料としての農家での利用は進まず、堆積された馬ふん由来の成分の溶脱による地域の水質の低下が危惧されています。株式会社リーフは、牧草などを主食とする競走馬の馬ふんには植物性有機物が多く含まれることに注目し、これらに植物質の有機物をさらに組み合わせて再発酵させることで良質な堆肥として製造していますが、窒素成分がやや低いなどの課題がありました。

 本研究は、地域の企業と大学が連携し、この両者の資源を活用することで相互の課題の解決を図りながら、地域に根ざしたリサイクル社会実現を目指す基礎研究として実施したものです。

namagomi1r.jpg生ごみのメタン発酵の残渣に馬ふん堆肥を混和することで地域有機資源の高度利用を促し再生可能エネルギー生産と循環型地域システムを構築

研究手法と成果

メタン発酵残渣と馬ふん堆肥の混和による肥効改善を確認

 本研究では、メタン発酵残渣と馬ふん堆肥の混和による肥料効果を確認しました。
 真人娱乐農学部附属国際フィールド農学センターの小松﨑教授らの研究グループは、食品残渣由来のメタン発酵残渣(以下、発酵残渣)に、鶏糞堆肥、牛糞堆肥、および馬ふん堆肥を混和させて、コマツナの発芽試験および栽培ポットによる生育試験を実施しました。まず、発酵残渣に鶏糞堆肥、牛糞堆肥、および馬ふん堆肥をそれぞれ、0、20,40,60,80,100%の重量割合で混和させ、90℃の熱水での抽出液を用いて、コマツナの発芽試験を行い、コマツナの種子根長を比較しました。また、発酵残渣に鶏糞堆肥、牛糞堆肥、および馬ふん堆肥をそれぞれ半量ずつ混和させてコマツナの栽培実験を行いました。

 まず、堆肥からの抽出液によるコマツナの発芽率について、鶏糞堆肥、牛糞堆肥、および馬ふん堆肥をそれぞれ40%混和させコマツナの種子根長を調査し、GI(Germination Index)を求めたところ、発酵残渣単独では3%となったのに対し、鶏糞堆肥、牛糞堆肥、および馬ふん堆肥を40%混和させることで、それぞれ7%、30%および19%に向上しました。

namagomi2.jpg 食品残渣由来のメタン発酵残渣に、鶏糞堆肥、牛糞堆肥および馬ふん堆肥の割合を変えて混和した場合のコマツナの種子根長の推移(Germination Index)。Germination Indexは、蒸留水の場合の種子根長を1とした場合のそれぞれの堆肥からの熱水での抽出水を供した場合の種子根長の比率

 また、コマツナの栽培試験の結果からは、発酵残渣単独の場合、発酵残渣の投入量が10aあたり1トン以下までは収量が向上するものの、5トンの施用では生育が著しく低下することが認められました。これに対し、発酵残渣に鶏糞堆肥、牛糞堆肥、および馬ふん堆肥を50%混和すると、鶏糞の混和では、5トン施用で37%の減収となりましたが、牛糞堆肥および馬ふん堆肥の混和ではそれぞれ5.9倍に生育向上するなど著しい肥効改善につながりました。これらの施肥体系別の窒素利用効率を求めてみると、鶏糞堆肥の混和では1.7倍の改善にとどまりましたが、牛糞堆肥では11.2倍を示し、馬ふん堆肥では12倍まで向上することが認められました。

 発酵残渣は、臭気が強い点も利用上の課題でしたが、馬ふん堆肥と混和することで臭気が低減され、50%混和では、硫化水素、メチルメルカプタン、アンモニアなどの臭気成分が検出されませんでした。さらに、発酵堆肥の肥料成分量は、窒素5.7%、リン酸1.9%、およびカリウム0.5%と窒素に偏った肥料成分でしたが、馬ふん堆肥を50%混和することで、窒素1.9%、リン酸1.8%およびカリウム1.7%となり、肥料成分バランスの向上が図られました。

生ごみ堆肥による発芽阻害を低コストで防ぐ

 既往の研究では、十分に熟成されていない生ごみ堆肥の中に、レタス、ダイコン、コマツナなどの試験種子の発芽を阻害する成分を含むという報告があり、その阻害物質としては、揮発性の低級脂肪酸類やフェノール性有機酸が現在のところ同定されています。しかし、これらの物質による発芽阻害の機構は分かっていません。また、この発芽阻害物質の消失には、従来、完熟化による発芽阻害物質の分解がなされてきましたが、この手法では、発酵残渣を再度移動させ、二次発酵させるなどの工程数の増加や施設の拡充などが必要となり、堆肥の生産コストを増やす原因となっていました。

 本研究の成果は、発酵残渣を二次発酵せずに、馬ふん堆肥などの地域の有機資源と混和させるだけで、肥料効果を著しく改善し、市販の有機肥料や堆肥と同等かそれ以上の肥効を示すことが可能となり、市場性のある有機資材へ転換できる可能性を示唆しています。

namagomi3.jpg 食品残渣由来のメタン発酵残渣と、これに鶏糞堆肥、牛糞堆肥および馬ふん堆肥をそれぞれ重量で50%混和した場合のコマツナの収量の推移

namagomi4.jpg 食品残渣由来のメタン発酵残渣と、これに鶏糞堆肥、牛糞堆肥および馬ふん堆肥をそれぞれ混和した場合のコマツナの窒素利用比率

今後の展望

 本研究は、食品廃棄物のメタン発酵残渣を低コストで市場性のある有機肥料に変換する手法の基礎的な現象を明らかとしました。今回の研究成果は、地域に潜在する未利用な有機資源を低コストで有機肥料に変換する可能性を示唆しています。今後は、草などの植物性有機たい肥のもつ機能性について科学的に解明していくとともに、日立セメント株式会社の食品廃棄物のメタン発酵残渣と、株式会社リーフが美浦村で手がける馬ふん堆肥という地域資源を活用した肥料の活用と、それによる循環型地域システムの実現を図っていきます。

関連写真

namagomi5.jpg 食品残渣由来のメタン発酵残渣に馬ふん堆肥を40%混和した場合のコマツナの種子根長の差違(左:発酵残渣のみ、右;発酵残渣+馬ふん堆肥)設置後48時間で調査した

namagomi6r.jpg食品残渣由来のメタン発酵残渣に馬ふん堆肥を50%混和した場合のコマツナの生育収量の差違 (左:発酵残渣のみ、右:発酵残渣+馬ふん堆肥) ポット試験では、それぞれの肥料を1ポットあたり、0、25、50および100g施用した

論文情報

  • タイトル:Methane Fermentation Residue Compost Derived from Food Waste to Aid Komatsuna (Brassica rapa) Growth
  • 著者:Nursanti(真人娱乐大学院農学研究科)、Ratih Kemala Dewi(東京農工大学大学院連合農学研究科(真人娱乐配置)、ボゴール農科大学)、菅沼豊、飯久保励(日立セメント株式会社)、関浩一(株式会社リーフ、東京農工大学大学院連合農学研究科(真人娱乐配置))小松﨑将一(真人娱乐農学部附属国際フィールド農学センター)
  • 雑誌:Horticulturae
  • 公開日:2021/12/03
  • DOI:10.3390/horticulturae7120551

※本研究の一部は、日立セメント株式会社との共同研究を受けて実施しました。

付記:日立セメント株式会社の食品廃棄物由来のメタン発酵残渣は、汚泥発酵肥料として肥料登録されており、安全確認がなされている。また、株式会社リーフの馬ふん堆肥も、肥料登録がなされている。